ボールペン、油性・水性・ゲルインクの違いについて
公開日:
:
筆記具
ボールペンはインクの種類によって3種類に大きく分類されます。
まずは、それぞれの違いについて整理してみます。
水性・油性・ゲルインクの比較
そもそもボールペンのインクは、色の元になる染料や顔料を溶媒で溶かしたものです。
溶媒が有機溶剤であれば「油性」、水であれば「水性」になります。
また、最近は油性インクを改良した「低粘度油性インク」と呼ばれる新しいインクが登場しました。
下の図では低粘度以外の旧来の油性インクを「従来型」としています。
低粘度油性インクは従来型の油性インクの欠点を改良したもの、ゲルインクは水性インクの欠点を改良したものと言えます。
染料と顔料の違い
インクの色を生み出す染料と顔料の違いについても触れておきます。
どちらも色のついた物質という点では同じですが、溶媒に溶けるか溶けないかという違いがあります。
染料は溶媒(水や有機溶媒)に完全に溶けるため、インクは「色のついた半透明な液体」になります。
一方で顔料は溶けずに微粒子として混じった状態です。
染料インクの筆跡は透明感があり紙の表面が透けて見えますが、顔料インクの筆跡は不透明でマットな雰囲気になります。
また、水性染料インクの筆跡は水に濡れると滲んたり流れたりしますが、顔料インクは耐水性があります。
(油性染料インクは耐水性はありますが、アルコールで滲んだり流れたりすることがあります。)
油性インクの特徴
従来型の油性インク
油性インクは歴史も古く、最も普及しているボールペン用のインクです。
染料を粘性の高い有機溶剤で溶かしたものが基本で、ペン先のボールが紙面を転がる際の筆記抵抗が大きく、重い書き味になります。
インクの発色もあまり良くなく筆跡が薄いこと、書き出しの掠れが発生しやすいことも欠点です。
書いているうちに余分なインクがペン先に溜まり、しまいには紙面にインクの塊が落ちる「ボテ」「ダマ」「ボタ落ち」などと言われる現象も発生します。
メリットとしてはどんな紙でも滲みが発生しないこと、耐水性が高いことが挙げられます。
また、他のインクと比較すると価格が安く、インクの消費も穏やかなのでリフィルが長持ちするため、コスト面では有利です。
更に、高い筆圧に耐えることが出来るため、複写用紙に書き込む際には最適な筆記具になります。
低粘度油性インク
油性インクで使用される有機溶剤の粘性を下げ、油性インクの欠点を改良したものが所謂「低粘度油性インク」です。
この分野に先鞭をつけたのはUni 三菱鉛筆の「ジェットストリーム」ですが、その後各社から同様の製品が登場しています。
溶剤の粘性が下がったことで、書き味は非常になめらかになりました。
また、顔料を配合することでくっきりとした鮮やかな筆跡が実現しています。
書き出しの掠れについても改善されているようです。
一方で、油性ボールペンのメリットの大半は維持されています。
(価格だけは残念ながら少し上がる傾向ですが。)
このように良いこと尽くめの低粘度油性インクですが、私は個人的に苦手です。
理由は2点。
1点目は、ペン先の滑りが良すぎてコントロールが難しいということ。
油性インクの場合はインク自体がヌルヌルしていますので、字を書くときにペン先が滑る感触があります。
水性インクの場合はサラッとしていて、金属のチップが紙にわずかに引っかかる感触があり、滑りを感じることはありません。
従来型の油性インクであれば適度な筆記抵抗のおかげであまり不都合を感じませんでしたが、低粘度油性インクは筆記抵抗が低く、インクによる滑りと相まってペン先が滑りすぎてしまいます。
結果的に止め・跳ねなどが思うようにいかず、元々下手な字がますます下手になってしまうのでした。
殴り書きには良いのですが、丁寧な字を書きたい時には低粘度油性インクを避けるようにしています。
2点目は、ボテ・ダマ・ボタ落ちがひどいこと。
油性インクに付き物のトラブルですが、体感的に従来型より低粘度のほうが発生頻度やボタ落ちによるシミの大きさ共に悪化していると感じます。
こちらも殴り書きではさほど気になりませんが、丁寧な字を書く場合には問題になります。
という訳で、最近人気の低粘度油性インクですが、私はあまり使っていません。
油性インクのお勧めは
水性インクとゲルインクについても書きたかったのですが、長くなってしまったのでエントリを分けたいと思いますが、最後に個人的な油性インクのお勧めを挙げて終わりたいと思います。
散々低粘度油性インクをDisってますので、当然お勧めは従来型の油性インクです。
スイス最大の筆記具メーカー、カランダッシュの「ゴリアット」という油性インクカートリッジは従来型ながらなめらかな書き味で、なによりボテ・ダマ・ボタ落ちが殆ど発生しません。
低粘度インクに比べると書き味では劣りますが、個人的には程よい筆記抵抗があったほうが好みですので調度良い感じです。
インクの出も良く、染料インクとしては比較的濃い筆跡になります。
ゴリアットカートリッジは低価格帯の製品を除いた大半のカランダッシュ製ボールペンで使用できます。
特にお勧めなのは六角形軸のスリムなボールペン、「エクリドール」と「オフィスライン849」です。
こちらも機会を改めてレビューを掲載したいと思います。
ad
関連記事
-
水性・ゲルインクボールペンの種類と特徴
前回のエントリーでは油性・水性・ゲルインクの特徴と、油性インクについて色々と述べました。今回は水性と
-
敢えて筆記具にこだわる
皆さんは、仕事でどんな筆記具を使っていますか? 会社が支給する安物のボールペンやシャープペンシルで
ad
- PREV
- 敢えて筆記具にこだわる
- NEXT
- 水性・ゲルインクボールペンの種類と特徴